大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(う)4967号 判決

仍つて記録を検すると、原判決挙示の証拠たる所論東京地方裁判所昭和二四年刑ち第二二六一号被告人渋谷信次郞に対する窃盜被告事件記録中に編綴の昭和二十四年五月十九日附渋谷信次郞の検察官に対する供述調書の原本又は謄本が本件記録に編綴せられていないことは洵に所論の通りである。而して右供述調書が原審において証拠調を終つた証拠書類であることは記録に徴して明白であるところ、それが右の様に記録に編綴せられていないところから推断すると、その原本又は謄本が遅滞なく原裁判所に提出せられなかつたことが認められる。尤もその原本を原裁判所に提出することを要求するのは或は合理的でないかも知れないけれども、裁判所の許可を得て右原本に代えその謄本を裁判所に提出することはもとより可能であり、これを要求するのは当然のことゝ謂わなければならない。果して然らば原審の訴訟手続はこの点において刑訴法第三一〇条に違反するものと謂わなければならない。

原審の裁判官は右供述調書の証拠内容を一度は認識したであろうけれども判決をなすに至るまでその認識を正確に保持することは必ずしもこれを期待し得ないから、右の法令違反の結果原判決の証拠内容に関する原審裁判官の認識並びに価値判断に消長を来すものと謂わざるを得ない。仍つて右の法令違反は判決に影響を及ぼすこと明白であると認むべきである。加之其の結果所論の様に当裁判所において原審の事実認定の当否を判断するに支障を来すに至ることは勿論のことである。所論は結局理由あるに帰し原判決は此の点において既に刑訴法第三九七条に依る破棄を免れない。

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